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ASDの同僚にやめてほしい…悩みを解決する関わり方

職場でASDの同僚の言動に、どう対応すれば良いか分からず悩んでいませんか。「ASDの同僚にやめてほしい」と感じる行動には、実は悪気があるわけではなく、発達障害の特性が関係しているケースが少なくありません。

この記事では、なぜ迷惑で関わりたくないとまで感じてしまうのか、発達障害の同僚との仕事で生まれるストレスや疲れの正体について深掘りします。本人に自覚なしで改善が見られない状況や、アスペルガー採用してしまったと企業側が抱える悩みの背景にも触れながら、発達障害と一緒に働くストレスを軽減するための具体的な関わり方を解説。

ASDの人が嘘をつくように見えたり、謝らなかったりする理由から、その執着や顔つきなどの特性、職場でASDの人とどう付き合うべきか、さらにはASDに向いている職業まで、多角的な視点から解決のヒントを提示します。この記事を読めば、ASDの同僚にやめてほしいと伝える前に、お互いが働きやすくなるための知識と実践的な方法が分かります。

なぜ?ASDの同僚にやめてほしいと思う原因

迷惑で関わりたくないと感じてしまう

ASD(自閉スペクトラム症)の同僚に対して、「仕事の進め方が独特で迷惑だ」「コミュニケーションが一方的で関わりたくない」という感情を抱くのは、決してあなただけではありません。こうした感情は、ASDの根源的な特性である社会的なコミュニケーションや相互関係の難しさ、そして限定的で反復的な興味や活動から生じることが多いのです。

例えば、会議中に話の流れと無関係な、本人が興味のある細部の話を延々と始めてしまったり、相手の表情や声のトーンから「今は忙しそうだ」と察することができずに話しかけ続けてしまったりすることがあります。本人に悪気はなく、むしろ良かれと思って情報を提供しているつもりでも、周囲からは「空気が読めない」「自己中心的だ」と見なされ、次第に心理的な壁が生まれてしまうのです。

また、自分の決めた手順やルールを固守する特性は、一度マニュアル化された作業を正確にこなす強みにもなりますが、予期せぬトラブルや急な仕様変更の際には弱点となり得ます。周囲が柔軟に対応しようと動いている中で、一人だけ「でもルールではこうなっています」と手順の遵守を主張し、全体の進行を妨げているように見えることもあります。このような言動が、チームワークを必要とする職場では「迷惑」と捉えられ、結果として「関わりたくない」という気持ちに繋がってしまうのです。

感情的な対立はNG

ここで最も重要なのは、これらの行動が意図的な反抗や悪意によるものではない可能性が非常に高いという点です。脳機能の特性上、社会的な文脈を理解したり、決まったパターンから外れたりすることが、本能的に難しいのです。特性への無理解から感情的に非難しても、本人はなぜ怒られているのか理解できず、関係が悪化するだけで根本的な解決には至りません。

「どうして分かってくれないんだ!」と感情的になる前に、まずは「なぜ、このような行動をとるのだろう?」と、その背景にある特性に関心を向けることが、関係改善の第一歩になります。パズルのピースが合わないと感じたら、相手のパズルの形を理解しようと試みる視点が大切です。

発達障害の同僚との仕事はストレスで疲れる

発達障害のある同僚との業務で、日々の積み重ねによって精神的なストレスや深刻な「疲れ」を感じるのは、単なる相性の問題ではありません。コミュニケーションの質と量の両面で生じるズレや、仕事の進め方の根本的な違いを埋めるために、周囲の人が多大なエネルギーを無意識のうちに消耗しているためです。

具体的には、以下のような状況が慢性的な疲労につながります。

指示が正確に伝わらないことによる手戻り

「いい感じにしといて」「なるべく早く」といった抽象的な指示は、ASDの人には極めて伝わりにくい傾向があります。どの状態が「いい感じ」なのか、どれくらいが「なるべく早く」なのか、具体的な基準が分からないため行動に移せないか、あるいは本人なりの解釈で進めてしまい、結果的に期待と全く違う成果物が出来上がることがあります。この手戻りを修正したり、指示の出し方を毎回工夫したりする必要があるため、精神的な負担がじわじわと増加していくのです。

一方通行なコミュニケーションによる精神的疲労

必要な「報告・連絡・相談」がなかったり、逆に自分の関心事については一方的に話し続けたりするため、仕事の進捗管理が難しく、常に不安がつきまといます。また、相手の気持ちを汲み取ることが苦手な特性から、こちらの多忙さや体調への気遣いが伝わらず、孤独感や「自分ばかりが苦労している」という徒労感を覚えてしまうことも、疲れを感じる大きな原因となります。

カサンドラ症候群の可能性

このような状況が長期化すると、ASDの人と密接に関わる配偶者や家族、同僚などが、抑うつ不安障害自己肯定感の低下、原因不明の身体症状といった心身の不調をきたす「カサンドラ症候群」に陥る可能性があります。これは、情緒的な相互関係が築きにくく、自分の気持ちが相手に伝わらない・共感されないという状況が続くことで生じる深刻なストレス状態を指します。

もし同僚との関わりで極度の疲れを感じ、プライベートにも影響が出ているなら、一人で抱え込まず、上司や社内の相談窓口、あるいは厚生労働省が紹介する専門機関に相談することも極めて重要です。

本人に自覚なしで改善が見られない

同僚の気になる行動に悩んでいる中で、最も対応が難しく、周囲の徒労感を増大させるのが「本人に発達障害の自覚なし」のケースです。本人が自身の認知や行動の特性に全く気づいていないため、周囲がなぜ困難を感じているのかを理解できず、結果として行動の改善が全く見られないという袋小路に陥りがちです。

自覚がない場合、本人は「自分は論理的かつ合理的に行動している」「なぜ周りはそんなに感情的になったり、曖昧な言い方をしたりするのか分からない」と考えていることが少なくありません。そのため、ミスや不適切な言動を指摘されても、それを自身の「特性」の問題とは捉えず、「指摘の仕方が悪い」「自分は悪くないのに責められている」と解釈し、頑なに反発したり心を閉ざしてしまったりすることもあります。

このような状況下で、周囲がいくら「もっと協調性を持って」「普通はこうするものだよ」と一般論を伝えても、残念ながら根本的な解決にはつながりません。なぜなら、本人は「普通」や「協調性」といった抽象的な概念を感覚的に共有することが難しく、何をどうすれば改善できるのか、具体的な行動レベルで理解できないからです。

「発達障害では?」と指摘するのは絶対にNG

たとえ善意からであっても、専門家でもない限り、他人の言動から発達障害だと決めつけることはできません。そして、それを本人に直接伝えるのは、相手の人格を深く傷つけ、関係性を修復不可能なレベルまで破壊しかねない非常に危険な行為です。人権に関わる問題に発展するリスクもあり、絶対に素人判断で病名を告げるようなことは避けるべきです。

改善を促したいのであれば、「発達障害」というレッテルを貼るのではなく、あくまで「業務上の具体的な課題」として、客観的な事実に焦点を当てたアプローチが求められます。「〇〇という発言によって、クライアントが少し困惑した表情をしていたよ」「この作業は、このチェックリストの手順通りに進めると、ミスが格段に減ると思うんだ」というように、具体的な行動とそれがもたらす結果、そして代替案をセットで冷静に、かつ丁寧に伝えることが重要です。

アスペルガー採用してしまったと悩む前に

「もしかして、うちの会社はアスペルガーの人を採用してしまったのかもしれない…」と、人事担当者や現場の管理職が頭を抱えるケースは、決して少なくありません。特に、構造化された採用面接では見抜けなかったコミュニケーションの課題や、入社後の業務でミスが頻発すると、その対応に苦慮し、採用判断そのものに疑問を抱いてしまうことがあります。

しかし、「採用してしまった」と後悔する前に、いくつか思考を転換すべき重要なポイントがあります。アスペルガー症候群(現在はASDに統合されています)の特性は、強みと弱みがコインの裏表のように、はっきりと表れることが多いのです。

弱みばかりに目を向けて組織の「お荷物」と見なすのではなく、その人の強みを最大限に活かせる環境を戦略的に整えることで、他の誰にも真似できないような、優れたパフォーマンスを発揮する人材になる可能性を秘めています。

ASDの人が持つ強みの例

もし、現在の部署でトラブルが頻発しているのであれば、それはその人の特性と、現在の業務内容や職場環境との間に深刻なミスマッチが起きているサインかもしれません。例えば、複数のタスクを同時にこなしながら臨機応変な顧客対応が求められる業務は非常に苦手でも、膨大なデータの中から特定のパターンを見つけ出す品質管理や、システムのバグを一つずつ潰していくプログラミングといった業務では、他の誰よりも高いパフォーマンスを発揮することがあります。

「採用してしまった」と考えるのは、いわば本人の特性に合った「取扱説明書」がないまま、ミスマッチな環境に配置している状態です。まずは本人の得意・不得意を客観的に分析し、障害者雇用促進法で求められている合理的配慮の観点からも、戦略的な適材適所の配置を検討することが、本人と会社の双方にとって有益な解決策となります。

発達障害と一緒に働くストレスの正体

発達障害のある人と一緒に働くことで感じる、あの何とも言えないストレスの正体は、多くの場合、「予測不能性への不安」と、通常業務に上乗せされる「膨大なコミュニケーションコスト」にあります。私たちは日々の業務において、言葉には出さない「暗黙の了解」や「社会的な共通認識」を潤滑油として、効率的に仕事を進めています。しかし、発達障害、特にASDの特性を持つ人は、この潤滑油が通用しにくいことがあるのです。

例えば、日々の業務における以下のような小さなズレの積み重ねが、大きなストレスにつながります。

ストレスの原因具体的な状況
予測不能性普段は穏やかなのに、オフィスのレイアウト変更といった些細な変化でパニックになったり、逆に重要な会議で急に黙り込んだりと、感情や行動の起伏が予測しづらい。こだわりの強さから、誰もが予期しないポイントで業務が完全にストップしてしまうことがある。
コミュニケーションコスト指示を出す際に「なぜこの作業が必要なのか」という目的から、「具体的な手順の1から10まで」を詳細に説明する必要がある。一つのことを正確に伝えるために、通常の何倍もの時間と精神的エネルギーを要する。
認識のズレタスクの優先順位の付け方や、「仕事が完了した」と見なす基準が、自分やチームの認識と大きく異なっている。この致命的なズレを埋めるための確認作業や修正作業が、業務時間外にまで及ぶこともある。

これらのストレスは、特定の誰かが悪いわけではなく、脳機能の特性の違いから生じる、いわば「OS(オペレーティングシステム)の違い」のようなものです。Windowsの常識が、Macでは通用しないことがあるように、こちらの「当たり前」が、相手にとっては全く「当たり前」ではない可能性を常に念頭に置く必要があります。

このストレスを個人で抱え込むのは限界があります。軽減するためには、チーム全体で対応方法を共有し、組織として取り組むことが不可欠です。「あの人には、チャットで箇条書きで伝えるとスムーズだ」「この緻密なチェック作業は〇〇さんの強みが活かせる」といった情報をチーム内で共有し、組織としてサポート体制を築くことが、個人の過剰な負担を減らし、働きやすい環境を作る唯一の鍵となります。

ASDの人が嘘をつく・謝らないのはなぜ?

ASDの同僚が、時に事実と異なることを言ったり、明らかなミスをしても素直に謝らなかったりする場面に遭遇し、不信感や怒りを覚えたことがあるかもしれません。しかし、これは一般的に考えられる「人を騙すための嘘」や「反省していないことによる反抗」とは、その動機やメカニズムが根本的に異なる場合があります。

嘘をつくように見える理由

ASDの人が事実と違うことを言う場合、その場を取り繕うためや、相手を意図的に騙そうという悪意からではないことが大半です。考えられる理由としては、主に以下の三つが挙げられます。

謝らないように見える理由

自身のミスで他人に迷惑をかけても謝罪の言葉がないのは、反省していない、あるいは相手を見下しているからではなく、「なぜ、この場面で謝る必要があるのか」という社会的な因果関係を理解できていないケースが考えられます。

ASDの人は、物事を論理的・直接的な因果関係で捉える傾向が強いです。自分の行動が、具体的にどのようなプロセスを経て、相手にどんな不利益や不快な感情をもたらしたのか、その繋がりを明確に理解できないと、「謝罪」という社会的な儀礼行動に至らないのです。「迷惑をかけたら、理由はどうあれまず謝る」という暗黙の社会ルールを、感覚的に理解しにくいのです。

もし謝罪や改善を求めるのであれば、「あなたがさっき〇〇したことで、データAとデータBに齟齬が生まれて、私は今から2時間かけて□□の作業を全てやり直す必要があり、今日の予定が台無しになってとても困っている」というように、事実と、それがもたらした具体的な結果、そして自分の感情を、具体的かつ冷静に伝える必要があります。その論理的な繋がりを本人が理解できて初めて、謝罪の必要性を認識し、具体的な改善行動について考えることができる場合があります。

ASDの同僚にやめてほしい時の関わり方

執着や顔つきなどASDの特性を理解する

ASDの同僚との関わり方を建設的に考える上で、まずはその背景にある、誤解されやすい行動特性を正しく理解することが不可欠です。特にネガティブに捉えられがちな「こだわり(執着)」や「表情(顔つき)」についても、その神経学的な背景を知ることで、見方が大きく変わるかもしれません。

特定の物事への強いこだわり(執着)

ASDの人は、興味の対象が健常者と比べて非常に狭く、その代わり一度興味を持った特定の物事や手順に対して、並外れて強いこだわりを見せることがあります。これは「執着」とネガティブに捉えられがちですが、見方を変えれば類まれなる「興味の集中」という強みでもあります。

一度決めたルールや自分なりの手順(マイルール)を頑なに守ろうとするのは、変化の多い予測不能な世界で、自分なりの秩序を保ち、精神的な混乱を防いで安心感を得るための、いわば自己防衛のメカニズムでもあるのです。

この特性は、仕事においては確かに「融通が利かない」「視野が狭い」と評価される原因になる一方で、厳格なルールや規格が定められた業務や、一つの分野を深く掘り下げる高い専門性が求められる分野では、他の誰にも真似できない非常に高いパフォーマンスを発揮することにつながります。

表情が乏しい・視線が合わない(顔つき)

「何を考えているか分からない」「無表情で怒っているようだ」「話を聞いているのかいないのか不明瞭だ」といった印象を持たれがちなのも、ASDの代表的な特性の一つです。相手の目を見て話すことや、会話の内容に合わせて喜怒哀楽の表情を適切に作ることが、本能的に苦手な場合があります。これは、相手に興味がない、あるいは反抗的であるというわけでは決してありません。

感覚過敏と同時処理困難との関係

視線を合わせるのが苦手な背景には、感覚過敏が深く関係していることもあります。相手の目から入ってくる視線、表情、瞳孔の動きといった膨大な情報量を脳が処理しきれずにフリーズしてしまうため、無意識に視線を逸らして情報量を制限しているのです。

表情が乏しいのも、複数のタスク(相手の話を聞く・内容を理解する・返答を考える・表情を作る)を同時にこなすのが苦手な「同時処理困難(マルチタスクが苦手)」が影響している可能性があります。話の内容を理解することに脳のリソースを全振りしているため、表情を作る余裕がないのです。

顔つきや表面的な態度だけで相手の内心を判断せず、「このような特性があるのかもしれない」と理解しようと努めることが、無用な誤解を避ける第一歩です。相手の感情が読み取れない場合は、「この件、どう思いますか?」「何か懸念点はありますか?」と感情ではなく思考を、言葉で直接確認するのが最も確実で効果的なコミュニケーション方法です。

職場でASDの人とどう付き合うべきですか

職場でASDの人と円滑に、そして生産的に付き合っていくためには、感情論や精神論を一切排し、具体的かつ論理的なシステムとしてのアプローチを心がけることが極めて重要です。ここでは、明日からすぐに実践できる、具体的な付き合い方のポイントを詳しく解説します。

全ての基本であり、最も効果的なのが、「指示やコミュニケーションの徹底的な具体化」です。ASDの人は、抽象的な表現や文脈、暗黙の了解を読み取るのが非常に苦手なため、全ての情報を明確に言語化・視覚化して伝える必要があります。

NGな指示 (曖昧な表現)OKな指示 (具体的・視覚的な表現)
「この資料、いい感じにまとめといて」「この資料のAとBの項目を、添付のExcelフォーマットを使って、グラフを2つ作成し、今日の15時までに課長にメールで提出してください」
「時間があるときに、あれやっといて」「現在進行中の〇〇の作業が完了したら、次にこのファイルのデータ入力を開始してください。締め切りは今週金曜日の17時です」
「なるべく早くお願いします」「これは最優先事項です。他の作業を中断して、明日の午前11時を第一締め切りとして進めてください」

5W1Hを常に意識する

指示を出す際は、常にWho(誰が)・When(いつまでに)・Where(どこで)・What(何を)・Why(なぜ)・How(どのように)を明確に伝えることを徹底しましょう。特に「Why(なぜ、この作業が必要なのか)」という背景や目的を丁寧に伝えると、本人の納得感が高まり、作業の全体像を理解しやすくなるため、モチベーションの維持と応用的な行動につながることがあります。

その他の重要なポイント

少し手間に感じるかもしれませんが、こうした工夫は、実はASDの人だけでなく、職場にいるすべての人にとって「分かりやすく、誤解の余地がない指示」となり、チーム全体の生産性向上と心理的安全性の確保に大きく貢献するんですよ。

ASDに向いている職業を知り役割を考える

ASDの同僚との関わり方に悩み、行き詰まりを感じたとき、視点を180度変えて「その人の特性が最大限に活かせる役割は何か?」を考えることは、本人にとっても組織にとっても、非常に建設的でポジティブなアプローチです。ASDの人は、特定の分野において、定型発達の人々が持ち得ない驚くべき集中力や能力を発揮することがあり、戦略的な適材適所が実現すれば、代替不可能なプロフェッショナルとして会社に貢献する人材になり得ます。

一般的に、ASDの特性が強みとして活かせるとされる職業や業務には、以下のような共通の特徴があります。

ASDの特性が活かせる仕事の4つの特徴

これらの特徴から、具体的な職業としては以下のようなものが挙げられます。これらはあくまで一例ですが、役割を考える際のヒントになるでしょう。

決めつけは禁物!重要なのは本人の意思

もちろん、これらはあくまで一般的な傾向であり、すべてのASDの人に当てはまるわけではありません。最も重要なのは、本人の興味・関心や、これまでの経験で培ってきたスキルです。「ASDだからこの仕事が向いているはずだ」と一方的に決めつけるのではなく、本人と丁寧に面談し、何が得意で、何に困難を感じ、そして将来的に何をしたいのかを把握した上で、役割を一緒に考えていくという共創の姿勢が不可欠です。

もし、現在の業務でその同僚が明らかに困難を抱えているなら、本人の強みを活かせそうな業務の一部を試験的に切り出して任せてみることから始めるのも一つの有効な手です。例えば、会議での発言は苦手でも、議論の内容を正確に記録する議事録作成は得意かもしれません。データ集計・分析といった作業を依頼することで、本人が自信を取り戻し、チーム内で自身の価値を再発見するきっかけになる可能性があります。

ASDの同僚にやめてほしいと伝える前に

ASDの同僚の行動に悩み抜き、どうしても「この行動だけはやめてほしい」と直接伝えなければならないと決意した時、感情的に訴える前に、一度立ち止まって慎重に戦略を練るべきです。伝え方一つで、状況は劇的に改善もすれば、取り返しのつかない最悪の結果にもなりかねません。ここでは、最終手段として「伝える」ことを決めた際の、具体的な心構えとテクニックをまとめます。

まず大前提として、あなたが変えようとするのは「その人の人格や存在そのもの」ではなく、あくまで「職場における特定の具体的な行動」であるという意識を明確に持つことが重要です。人格を否定するような言い方や、過去の失敗を蒸し返すようなやり方は、絶対に避けなければなりません。

伝える際の強力な武器「I(アイ)メッセージ」と「DESC(デスク)法」

相手を責めずに自分の気持ちや要望を伝え、かつ具体的な行動変容を促すためのコミュニケーション手法として、「I(アイ)メッセージ」と「DESC(デスク)法」が非常に有効です。これらを組み合わせて使うことで、対立ではなく対話の場を作ることができます。

これらの手法を用いることで、相手を一方的に非難・断罪する形ではなく、あくまで「問題解決のための相談」や「チームを良くするための提案」として、こちらの要望を建設的に伝えやすくなります。

また、伝える際は、他の人に聞かれない個室や会議室を選び、お互いに精神的な余裕がある、業務が比較的落ち着いているタイミングを見計らいましょう。本人が締め切りに追われていたり、疲弊している時に伝えても、防御的になるだけで冷静に話を聞くことは難しいでしょう。

そして最も大切なのは、この対話のゴールは「相手を論破し、自分の正しさを証明すること」では断じてなく、「お互いが気持ちよく、かつ生産的に働くための共通ルールを一緒に作ること」だという視点を決して忘れないことです。あなたの「サポートしたい」という誠実な気持ちを伝えながら、対話を進めることが、より良い職場環境への唯一の道と言えるでしょう。

まとめ:ASDの同僚との悩みを解決するために

ASDの同僚との関係に深く悩んだとき、感情的に「やめてほしい」と感じてしまうのは、人間としてごく自然な反応です。しかし、その感情に任せて行動する一歩手前で、相手の行動の背景にある特性を理解し、コミュニケーションや環境を少し工夫することで、状況は大きく変わる可能性があります。この記事で解説してきた重要なポイントを、改めて確認しましょう。

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