自閉症の子が絵本好きになる理由|選び方と読み聞かせのコツ
こんにちは。発達グレーとライフデザイン手帖の、ひかり先生です。
「うちの子、自閉症なのに絵本が大好きで、同じ本を何十回も読んでって言ってくる」「絵本 めくるだけ 自閉症で検索したら不安になってしまった」——そんな気持ちでこのページを開いてくれたのかなと思います。
自閉スペクトラム症や発達障害のある子どもは、絵本に対して独特のこだわりや強い興味を見せることが少なくありません。物語をちゃんと聞いているのか分からない、破ってしまう、パラパラめくるだけで内容を見ていないように見える……そういった行動には、実はきちんとした理由があります。
この記事では、自閉症の子がなぜ絵本を好きになりやすいのか、その特性の背景から、めくるだけ・破るなどのお悩みへの対策、そして発達を後押しする絵本の選び方や読み聞かせの工夫まで、まとめてお伝えしていきます。
- 自閉症の子が絵本に強い興味を示す背景と特性
- 絵本をめくるだけ・破ってしまう行動への具体的な対策
- 読み聞かせが子どもの発達に与える療育的な効果
- 特性に合わせた絵本の選び方とおすすめの絵本
自閉症の子が絵本が好きになる理由と特性

まずは、なぜ自閉症の子どもたちが絵本に強く惹かれるのか、その背景にある特性から見ていきましょう。一般的な「お話を楽しむ読書」とは少し違った楽しみ方をしている場合が多く、そこには理由があります。
視覚優位な特性と絵本の相性の良さ

自閉症の子どもの多くは、耳から入ってくる情報よりも、目から入ってくる視覚情報のほうが処理しやすいという特性を持っています。これを視覚優位と呼んでいます。
言葉の発達がゆっくりな子にとって、話し言葉だけで内容を理解するのは、私たちが不慣れな外国語を耳だけで聞いているような状態に近いのかもしれません。聞き取ることも、意味を理解することも、思った以上に負荷がかかってしまいます。
でも絵本は、イラストという視覚情報と、言葉という聴覚情報がセットになっていますよね。だからこそ、言葉の意味を絵と結びつけながらスッと理解しやすいんです。
言葉の遅れが気になるお子さんにとって、絵本は本当に相性の良いツールだと感じます。
ポイント
絵本は「見る」と「聞く」が同時にできるアイテム。視覚優位な特性を持つ子にとっては、言葉の意味を理解する橋渡し役になってくれます。
物語より図鑑や特定ジャンルへの強い興味

ストーリーのある物語絵本よりも、電車や車、虫、動物などの図鑑、あるいは規則性や事実がベースになった本に強く惹かれる子は多いですね。
学童期に入る前から文字をどんどん覚えて、一人で黙々と読めるようになる子もいます。でもそれは、お話の流れを楽しんでいるというよりも、好きなジャンルの知識をどんどん吸収したり、細部をじっくり眺めたりすることに没頭しているケースが目立ちます。
「物語が苦手=絵本が嫌い」ではないんですよね。むしろ好きなジャンルであれば、誰よりも深く楽しんでいることが多いです。
同じ絵本を何度も読んでほしがるエンドレスリピート

ある日突然、特定の絵本を何度も何度も持ってきて「読んで!」とせがむブームが来ることがあります。読み終わった瞬間に「もう一回!」と言われて、正直へとへとになってしまう保護者の方も多いのではないでしょうか。
私もこの状況、想像するだけでちょっと大変だなと感じます。ただ、この「何度も同じ絵本を読んでほしがるブーム」は、子どもの脳の中で言葉を理解する部分に発達の旬が来ているサインだと言われています。
栄養の吸収率が高いこの時期に、要望に合わせて繰り返し読み聞かせをしてあげることで、言葉の理解力がぐっと育ちやすくなります。中には絵本を丸ごと暗唱できるようになる子もいるくらいです。
豆知識
エンドレスリピートは疲れる時期ではありますが、実は言葉の理解が爆発的に伸びるチャンスの時期でもあります。可能な範囲で付き合ってあげると、後々の語彙力につながりやすいですよ。
言葉が出なくても育つ豊かな内面世界

まだ発語がない段階でも、絵本の読み聞かせを通して、子どもの内面には言葉の理解力や集中力、そして想像力の世界がしっかり育まれています。
絵本の読み聞かせは、大人の膝の上に「当然のように乗ってくる」といったスキンシップの機会にもなります。この関わりを通じて、子どもは周囲の大人への安心感や信頼感を育んでいくんですね。
癇癪を起こしたときに、自分を落ち着かせるための道具として、自ら進んでお気に入りの絵本を持ってくる子もいます。絵本が精神安定剤のような役割を果たしているケースもあるということです。
絵本DJやパフォーマンス読みなど独自の楽しみ方

絵本への理解が深まってくると、子ども自身が独自の遊び方をアレンジし始めることがあります。ここでは代表的な2つのパターンをご紹介します。
| 楽しみ方 | 特徴 |
|---|---|
| ミックス読み(絵本DJ) | 複数の絵本や玩具を並べ、自分が指差した部分を親に次々と読ませる遊び方 |
| パフォーマンス読み(演出家) | 絵本の語りやセリフに合わせて、オリジナルの動作やパフォーマンスを披露する遊び方 |
これらは言葉やコミュニケーションの発達にとって、実はかなり重要な活動です。自律的な余暇活動が広がっている、素晴らしい成長のサインとして受け止めてあげてほしいなと思います。
自閉症の子が絵本が好きなときの読み聞かせと選び方

絵本が好きなことは嬉しい反面、「めくるだけ」「破ってしまう」といったお悩みも出てきますよね。ここからは、そうしたよくある行動への対策と、絵本を最大限に活かすための選び方・読み聞かせのコツをまとめていきます。
絵本をめくるだけ・破ってしまう理由と対策

ペラペラめくるだけの理由
絵本を1ページずつじっくり見ずに、高速でパラパラめくるだけの時期を経験する子は多いです。ネットで「絵本 めくるだけ 自閉症」と検索して不安になってしまう気持ち、すごくよく分かります。
ただ、この行動にはちゃんと理由があります。
- ページがめくれるときの風、音、指先の感触といった感覚的な刺激そのものを楽しんでいる
- 目から入ってくる絵や色彩の移り変わりを楽しんでいる
- 本全体ではなく、自分のお気に入りの1ページだけを見たくて、そこに行き着くまで高速でめくっている
- 大人が本をめくる動きやスマホを操作する動きを真似している
無理にめくるのを止めさせてストーリーを聞かせようとすると、絵本自体が嫌いになってしまう原因になりかねません。子どもの「めくりたい」という欲求は、できるだけ満たしてあげましょう。
邪魔しない程度に、大人が「りんごだね」「ぶっぶー、車だね」と絵に指を差しながら独り言のように言葉を添えてあげると効果的ですよ。
破ってしまう理由と対策
手先の発達が未熟で、力加減、専門的には固有受容覚のコントロールが難しいために、悪気なく絵本を破ってしまうことがあります。また、破ったときの「ビリビリ」という音や感触、大人の反応が面白くて、それがこだわりになって毎回破るようになってしまうケースもあります。
注意したいポイント
破る行動を強く叱ると、絵本への興味自体を失わせてしまう可能性があります。まずは環境面の工夫で「破りにくい状態」を作ってあげるのが先かなと思います。
対策としては、ページが分厚く簡単には破れない、舐めてもふやけないボードブック仕様の絵本からスタートするのがおすすめです。しかけ絵本など破れやすいものは、大人が手を添えて正しいめくり方を優しく教えてあげると、破る行動を未然に防ぎやすくなります。
読み聞かせがもたらす療育的効果

絵本の読み聞かせは、親子のエンターテインメントというだけでなく、発達障害のある子にとっておうち療育としても、とても有効な手段になります。
語彙力と理解力の向上
視覚情報の助けを借りることで、言葉の意味を正しく理解し、語彙を増やしていくことができます。耳からの情報だけでは聞き流してしまう言葉も、絵本の中であれば立ち止まって確認できますよね。
生活習慣の定着
言葉で指示されるだけでは、手洗いやトイレ、着替え、就寝といった生活習慣がなかなか身につかないこともあります。でも、大好きなキャラクターが楽しそうにトイレへ行ったり寝る準備をしたりする姿を見ると、視覚的に見通しが立ちやすくなり、自発的な「やってみよう」という気持ちが引き出されやすくなります。
言葉のパターンの習得
自分でゼロから文章を組み立てるのは苦手でも、お気に入りのセリフをパターンとして丸暗記し、同じような場面でそのまま使うのが得意な子は多いです。絵本の中の挨拶や「こんなときなんて言う?」というセリフのパターンをたくさんストックしておくことで、日常のコミュニケーションに活かしやすくなります。
他者視点・感情の学習
人の気持ちを想像することが苦手な子にとって、絵本は感情のシミュレーション教材になります。「表情+場面+言葉」がセットで描かれているため、「どうしてこのキャラクターは怒っているのか」を客観的に学ぶことができます。
発達障害のあるお子さんへの支援については、国立障害者リハビリテーションセンター発達障害情報・支援センターでも詳しい情報がまとめられています。気になる方はこちらも参考にしてみてください。(出典:国立障害者リハビリテーションセンター発達障害情報・支援センターhttps://www.rehab.go.jp/ddis/)
発達障害の子に合う絵本の選び方

絵本を届けるときは、次の3つのポイントを意識すると、興味を持ちやすく発達も促しやすくなります。
絵本選びの3つのポイント
- シンプルな文と絵で、分かりやすいストーリーになっているか
- 繰り返しの展開を楽しめる作りになっているか
- 登場人物の気持ちを考えることができる表現になっているか
文章が長くて複雑なものは、内容が理解できずに途中で飽きてしまいがちです。イラストが理解のメインとなるような、シンプルで明快な絵本を選び、大人が言葉を自由に補足しやすい余白のある絵本を選んでみてください。
「同じ言葉」や「同じパターンの展開」が繰り返される絵本は、次に何が起こるかを予測しやすいため、大きな安心感を与えてくれます。繰り返しの中で少しだけ変化する部分に気づくことで、注意深く見る力も育まれますよ。
表情が豊かに描かれていて、感情の変化やその理由が分かりやすい絵本は、他者理解のトレーニングとしても役立ちます。
特性別・目的別おすすめ絵本リスト

ここでは、目的別におすすめの絵本をいくつかご紹介します。あくまで一例として、お子さんの興味に合わせて選んでみてくださいね。
| 目的 | おすすめ絵本 | 特徴 |
|---|---|---|
| 音・リズムを楽しむ | だるまさんシリーズ | リズムの良い言葉とユーモラスな動きで大人気。模倣遊びの発達にもつながる |
| 感覚を楽しむ | じゃあじゃあびりびり | 擬音語・擬態語が満載で、発語のきっかけになりやすい |
| 触覚・選択の練習 | ふわふわどっち? | 触感を楽しみながら、2択で選ぶ意思表示の練習ができる |
| 語彙力・記憶力 | あっちゃんあがつく たべものあいうえお | 69音すべてが登場し、自然に語彙とひらがなの土台が育つ |
| 感情コントロール | いらいら ばいばい | アンガーコントロールのコツをやさしく学べる |
| 生活習慣 | おとこのこトイレ/おんなのこトイレ | トイレトレーニングの導入に活躍する |
ほかにも、「だめよ、デイビッド!」のように叱られてばかりの主人公が最後にぎゅっと抱きしめられるお話は、「叱られても自分は愛されている」という安心感を伝えてくれる一冊です。「どうぞのいす」のように、思いやりや人との関わりを優しく描いた定番絵本も、他者への意識を育てるきっかけになります。
補足
絵本の効果や合う・合わないはお子さんによって差があります。ここでの紹介はあくまで一般的な傾向ですので、実際に手に取ってみて、お子さんの反応を見ながら選んでいただくのが一番かなと思います。
効果を高める読み聞かせの実践テクニック

自閉症の子に絵本を読むときは、「静かに座って黙って聞く」という一般的なスタイルに固執する必要はありません。特性に合わせた柔軟な関わり方が、絵本の効果を最大化してくれます。
他者視点を育てる問いかけの工夫
絵本を読み進めるだけでなく、途中で「ロバさんはまだ寝ているね。カゴの中身が変わったことに気づくかな?」など、登場人物の視点に立って一緒に考える会話を挟んでみましょう。日常生活でも「お父さんはどう考えているかな?」と問いかけることで、他者の視点に立って考える力を少しずつ養えます。
分からなくてもOKという雰囲気作り
「このとき、どんな気持ちだったと思う?」と問いかけても、答えられないことがあります。それでいいんです。「分からなくて当然」「どんな感想でも間違いではない」という受容的な雰囲気を作っておくことが大切です。ユニークな感想や率直な疑問を「いい質問だね!」と受け止めることで、好奇心や自己肯定感が育まれていきます。
多動・注意散漫な子への双方向アプローチ
じっと座っているのが苦手な子には、以下の工夫が有効です。
- 黙って聞かせるのではなく、途中で自由に質問させたり感想をシェアしたりして双方向に進める
- 途中で絵本の動作を真似して一緒に動いたり、歌を歌ったりして身体の欲求を満たす
- 「発言するときは手を挙げる」といったルールを事前に紙に書いて貼り、視覚的に確認できるようにする
見通しの提示で不安を解消する
自閉症の子どもは、先の展開が分からないことに不安を感じやすい特性があります。「まずこの本を読みます」「そのあと感想を話します」といった流れを事前に視覚的に示しておくと、安心して絵本に集中しやすくなります。
まとめ:自閉症の子が絵本を好きになる意味
ここまで、自閉症の子が絵本が好きになりやすい理由や、めくるだけ・破ってしまうといった行動への対策、絵本選びや読み聞かせの工夫についてお伝えしてきました。
物語をちゃんと理解しているかどうか分からなくても、同じ絵本を何百回もリピートされて疲れてしまっても、その裏には子どもなりの発達のペースや理由がちゃんとあります。
自閉症の子が絵本が好きという状態は、言葉の理解力や想像力、そして安心感を育てている、とても大切なプロセスなんですよね。焦らず、お子さんのペースに合わせて絵本と付き合っていってもらえたらいいなと思います。
もちろん、子どもの発達や行動に関する不安が大きいときは、この記事の内容だけで判断せず、かかりつけの医療機関や発達支援の専門家に相談してみることも大切です。数値や傾向はあくまで一般的な目安として捉えていただき、気になることがあれば早めに専門家へ相談してくださいね。
発達に関する他の記事もぜひ参考にしてみてください。トップページから関連するコラムもチェックできますので、よかったら覗いてみてください(発達グレーとライフデザイン手帖)。
