自閉症

生後2ヶ月で笑うのは自閉症?赤ちゃんの笑顔と発達の目安

yama333

こんにちは。発達グレーとライフデザイン手帖の「ひかり先生」です。

「生後2ヶ月 笑う 自閉症」といったキーワードでこのページに来てくださった方は、きっと赤ちゃんのふとした笑顔を見て、「あれ?」と何か気になったり、逆にあまり笑わないことでご不安になったりしているのかなと思います。

生後2ヶ月頃は、生まれたての頃とはまた違った反応が見え始める時期ですよね。だからこそ、その「笑い方」が一般的な発達とどう違うのか、あるいは「目が合わない」気がするなど、視線やクーイングの様子も含めて、発達障害との関連が気になってしまうお気持ち、とてもよく分かります。

この時期の赤ちゃんの笑顔には、「新生児微笑」と呼ばれる反射的なものと、コミュニケーションの始まりである「社会的微笑」があります。笑うから自閉症、あるいは笑わないから自閉症、と単純に決まるものでは決してありません。

この記事では、生後2ヶ月の赤ちゃんの「笑う」という行動について、自閉症との関連でご不安な方へ、今知っておきたい基本的な情報や発達の目安について、私の視点でお話ししていきますね。

  • 生後2ヶ月の「2種類の笑顔」の違い
  • 「笑う」または「笑わない」と自閉症の関係性
  • 笑顔以外に注目したい発達のポイント
  • 不安な時にまず何をすべきか

生後2ヶ月で笑うことと自閉症の不安

生後2ヶ月頃の赤ちゃんの「笑い」について、自閉症との関連で心配になるポイントは、「笑い方」と「笑わないこと」の両方があるかなと思います。まずは、この時期の笑顔の基本的なメカニズムから見ていきましょう。

生後2ヶ月の笑顔は2種類ある

まず大前提として、生後2ヶ月ごろの赤ちゃんに見られる笑顔には、大きく分けて2つの種類があります。それが「新生児微笑(しんせいじびしょう)」「社会的微笑(しゃかいてきびしょう)」です。

この時期は、ちょうど1つ目の新生児微笑が消えかけて、2つ目の社会的微笑が出始める、まさに「笑顔の移行期」なんですね。だからこそ、赤ちゃんの笑顔の様子が不安定に見えたり、「これはどっちの笑顔なんだろう?」とどう解釈していいか迷ったりしやすい時期かもしれません。

この2つの笑顔は、意味合いが全く異なります。まずはそれぞれの特徴を表で比較してみましょう。

特徴新生児微笑(生理的微笑)社会的微笑
開始時期出生直後から生後2ヶ月ごろから
きっかけ特になし(反射的・生理的)人の顔、声、あやし
見られる場面睡眠中、ウトウトしている時目が覚めていて機嫌が良い時
発達上の意味反射コミュニケーションの始まり
今後の経過生後2〜4ヶ月ごろに自然と消失成長とともに洗練され、豊かになる

このように、同じ「笑う」という行動でも、その背景は大きく違います。それぞれの笑顔について、もう少し詳しく見ていきますね。

反射的な新生児微笑とは

新生児微笑は「生理的微笑」とも呼ばれます。英語では「エンジェルスマイル」なんて呼ばれることもあり、とても可愛らしいものですよね。

これは、外部からの働きかけ(あやしたり、話しかけたり)とは一切関係なく、赤ちゃんが反射的に見せる笑顔のことです。

こんな特徴があります。

新生児微笑の特徴

  • 生まれた直後から見られる(時には胎児のエコーでも!)
  • 主に寝ている時や、ウトウトしている浅い眠りの時に多い
  • あやした反応ではなく、赤ちゃんの内部的な生理状態(満足感やリラックス)によって引き起こされると考えられている
  • 一般的に生後2ヶ月ごろまでに自然と減っていく(※個人差あり)

もし、「あやしていないのにニヤッと笑う」「目が合っていないのに笑っている」と感じる場合、それはこの新生児微笑がまだ残っているだけかもしれません。これは発達の過程で見られる自然なものですね。

消える時期も個人差があって、生後4ヶ月ごろまで見られる子や、1歳前後の睡眠中に見られることもあるようです。ですから、生後2ヶ月でまだこの笑顔が見られても、何も心配いりません。

コミュニケーションの社会的微笑

一方で、こちらが「社会的微笑」です。これは、新生児微笑とは全く違い、他者とのコミュニケーションの第一歩として現れる、発達上とても大切な笑顔です。

人の顔や声、あやし(スキンシップなど)といった「外部からの社会的な働きかけ」に対して、赤ちゃんが「反応」として返す笑顔なんですね。

一般的に生後2ヶ月ごろから見られ始め、生後3〜5ヶ月ごろにかけて、よりはっきりと、頻繁に見られるようになってきます。赤ちゃんが、人の顔や声に興味を持ち、それに応えようとし始めたサインと言えます。

社会的微笑は「社会性」の第一歩

この笑顔が見られるということは、赤ちゃんが「自分」と「他人」を区別し始め、他人との「やり取り」に喜びを感じ始めた証拠です。これが、今後のあらゆるコミュニケーション能力の土台になっていきます。

ちなみに、生後2ヶ月ごろの社会的微笑は、まだ「普遍的微笑」と呼ばれる段階で、特定の人(親など)だけでなく、見知らぬ人の顔や、場合によっては好きなおもちゃなどにも笑顔を見せることがあります。これから徐々に、親しい人を認識して、特別な笑顔を見せるようになっていきますよ。

ですから、もし生後2ヶ月の赤ちゃんがあやした時に笑うのであれば、それは自閉症のサインどころか、順調な社会性の発達が始まっている証拠と考えて良いかなと思います。

生後2ヶ月で笑わないのは個人差

逆に、「生後2ヶ月なのに、あやしても笑わない」とご不安な方もいらっしゃると思います。

確かに、自閉症スペクトラム症(ASD)の早期の特性として「社会的微笑の欠如」が挙げられることはあります。ですが、生後2ヶ月の時点では、まだ社会的微笑が見られなくても、それを「異常」と判断するのは早すぎます。

発達のスピードは本当に人それぞれです。目安として「生後2ヶ月ごろから」と言われますが、これはあくまで平均値。もっとゆっくりの子も当然いますし、赤ちゃんの気質(おっとりしている子、慎重な子など)によっても、表情の出方は変わってきます。

現時点では個人差の範囲内であることがほとんどなので、「笑わせなきゃ!」とプレッシャーを感じる必要は全くありません。焦らず、もう少し温かく見守りながら、優しく話しかけたり、抱っこやベビーマッサージなどでスキンシップを続けたりすることが何より大切ですね。

目が合わないのは自閉症のサイン?

笑顔と同じくらい、あるいはそれ以上にご不安なのが「目が合わない」ことかもしれません。

「笑ってはいるけど、視線が合わない気がする…」というご相談もよく聞きます。自閉症の特性として「視線が合いにくい」ことがあるのは事実です。

ただ、これも生後2ヶ月という時期がポイントです。この頃の赤ちゃんの視力は、まだ0.02〜0.05程度と言われ、世界はかなりぼんやりとしか見えていません。

ようやく、動くものを目で追う「追視」ができるようになり、両目で物を見る(ピントを合わせる)機能が整い始める時期です。そのため、大人と同じようにバッチリと視線が合う方が珍しいかもしれません。

大人の顔を「かたまり」として認識し、特にコントラストのはっきりした「目」や「髪の生え際」あたりに注目し始めている段階です。「目が合わない」と感じても、それは赤ちゃんが一生懸命「見る練習」をしている最中なのかもしれません。

生後2ヶ月の笑う様子と自閉症の兆候

赤ちゃんの様子を心配する時、私たちはつい「笑顔」や「視線」など、一つの分かりやすい行動に注目しがちです。でも、発達の専門家が見る時は、必ず「全体像」で判断します。笑顔以外の要素も合わせて見ていきましょう。

クーイングしないのは自閉症だから?

「あー」とか「うー」といった、母音中心の可愛らしい声。これが「クーイング」ですね。一般的に生後1〜2ヶ月ごろから始まるとされます。これは本格的なおしゃべり(喃語:なんご)が始まる前の、大切な発声練習です。

これも笑顔と同じで、コミュニケーションの土台となる大切な発達ステップです。

自閉症の傾向がある場合、このクーイングの開始が遅れたり、頻度が少なかったり、あるいは特徴的な出方をしたりすることがある、と指摘されることもあります。

クーイングで見たいポイント

  • やり取りになっているか:親が話しかけた時に、反応するように(間を合わせて)声を出しているか。
  • 一方通行でないか:周りに関係なく、一人ごとのようにずっと同じ声を出しているだけではないか。

保護者の方が話しかけた後に、赤ちゃんが「あー」と応える。これは、会話のキャッチボール(専門的にはターンテイキングと言います)の本当に最初の第一歩なんです。

ただ、これも「生後2ヶ月でクーイングが少ない=自閉症」では全くありません。声が出始める時期も個人差が非常に大きいです。あくまで、この先数ヶ月の経過を見ていく上での「観察ポイントの一つ」くらいに捉えてくださいね。

笑顔以外の社会的発達チェック

結局のところ、自閉症の中核的な特性は「社会的なやり取りの難しさ」にあると言われます。笑顔も、視線も、クーイングも、すべて「他者とやり取りするための道具」なんですね。

生後2ヶ月の時点では、その道具がまだ出揃っていなかったり、使い方が未熟だったりするのは当たり前です。

注目すべきは、「笑顔があるか/ないか」のゼロイチではなく、「目・顔・声を使って、なんとなくでも他者と関わろうとする力」が育ってきているかどうか、という全体の流れです。

順調な発達のサイクル

  1. 赤ちゃんが人の顔を見る(視線)
  2. 親が気づいて「どうしたの?」と笑いかける(働きかけ)
  3. 赤ちゃんが「ニヤッ」と笑い返す(社会的微笑)
  4. 親が嬉しくなって「可愛いねえ」と話しかける(声かけ)
  5. 赤ちゃんが「あー」「うー」と応える(クーイング)

…といったように、目と顔と声を使ったポジティブな循環が生まれ始めているかどうか。これが「社会的相互作用」の芽生えです。

現時点でこのサイクルが完璧でなくても、その「兆し」が見えるかどうかが、笑顔一つの有無よりもずっと重要かなと思います。

視線が合わない他の理由(斜視など)

「目が合わない」というご不安について、先ほども少し触れましたが、もう一度強調しておきたい大切なことがあります。それは、脳機能や発達特性(自閉症など)の問題ではなく、純粋に「目」の身体的な問題である可能性です。

眼科的な問題の可能性

赤ちゃんは、自分で「見えにくい」とは言えません。「目が合わない」と感じる時、以下のような可能性も考慮が必要です。

  • 斜視(しゃし):片方の目と、もう片方の目の視線がそろわない状態。内側や外側に向いてしまうなど。
  • 弱視(じゃくし)や先天性の視力障害:生まれつき視力が弱い、あるいは白内障などで視界が濁っていると、人の顔がハッキリ見えていない可能性があります。
  • 眼振(がんしん):意思とは関係なく目が小刻みに揺れてしまい、視線が定まらない状態。

そもそも見えていなければ、視線を合わせたり、笑顔を返したりすることは難しいですよね。これらの問題は、早期発見・早期治療が非常に重要です。

自閉症を心配する前に、もし「どうも目の動きがおかしい」「片方の目だけ違う方向を向いている気がする」「光を異常にまぶしがる」「視線が全然そろわない」というご不安が強ければ、一度、小B児科医に相談の上、必要であれば小児眼科で診てもらうというのも重要な選択肢です。

専門家が指摘する0歳児のサイン

参考までに、研究などで指摘されている自閉症スペクトラム症(ASD)の0歳児における早期兆候(可能性のあるサイン)をいくつか挙げます。

0歳児の早期兆候の例

  • あやしても笑わない、表情が乏しい
  • 目が合いにくい
  • 名前や大きな音への反応が鈍い
  • 抱っこへの抵抗感(抱かれるのを嫌がる、体がそっくり返るなど)
  • 感覚への過敏性(特定の光や音に過剰に反応する、または無関心)
  • (もう少し月齢が進むと)人見知りをしない、後追いをしない、指差しをしない、など

【最重要】これは診断リストではありません!

これらのサインは、あくまで「そういう傾向があるかもしれない」というだけで、生後2ヶ月の赤ちゃんに当てはめて自己診断するためのものでは絶対にありません。

当てはまるからといって自閉症とは限りませんし、当てはまらなくても自閉症の場合もあります。乳児の発達は非常に流動的で、個人差がものすごく大きいです。このリストは、「今後、専門家に相談する時に、どんな点を伝えたらいいか」の参考程度にしてくださいね。

まずは3〜4ヶ月健診を活用

生後2ヶ月の赤ちゃんの保護者の方にとって、最も身近で重要な機会が「3〜4ヶ月児健康診査」です。

これは、まさに今ご不安に思われているような、発達のチェックをしてくれる絶好の機会です。多くの自治体で無料で実施されています。

健診では、小児科医や保健師さんが、

  • 首のすわり具合(運動発達)
  • 目の動き(追視)(視覚と、それを通じた社会性の確認)
  • 音や声かけへの反応(聴覚と、それを通じた社会性の確認)
  • あやした時の反応(社会的微笑の確認)
  • クーイングや発声の様子

といった点をプロの目でチェックしてくれます。

こども家庭庁が示す母子健康手帳の様式にも、3~4か月児の保護者の記載欄には「あやすと笑いますか」といった項目があり、これは国が定めた重要なチェックポイントの一つなんです。(出典:こども家庭庁「母子健康手帳」

ご自宅での気になる様子(例:「目が合いにくい気がする」「あやしてもなかなか笑わない」「こういう笑い方をする」)を具体的にメモしておき、健診でそのまま伝えてみてください。動画を撮っておくのも、とても有効ですよ。きっと専門的な視点からアドバイスがもらえるはずです。

不安な時の相談窓口と小児科

健診まで待てない、あるいは健診で「様子を見ましょう」と言われたけどまだ不安が残る、という場合は、一人で抱え込まないでください。

不安な気持ちを専門家と共有するだけでも、少し心が軽くなるかなと思います。

主な相談窓口

  • かかりつけの小児科:予防接種などで日頃からお世話になっている、一番身近な専門家です。まずはここで相談するのが第一歩ですね。
  • 保健所・保健センター:お住まいの地域の子育て・発達に関する最初の公的な相談窓口です。保健師さんが親身に話を聞いてくれるはずです。電話相談を受け付けていることも多いですよ。
  • 児童発達支援センター:発達に心配のある子どもや家族への支援を専門に行う機関です。より専門的な視点でのアドバイスがもらえるかもしれません。

生後2ヶ月の段階で相談して「早すぎる」なんてことは決してありません。むしろ、保護者の方が早期から赤ちゃんの様子をしっかり見ている証拠です。

生後2ヶ月の笑う様子と自閉症まとめ

最後に、生後2ヶ月の「笑う」ことと自閉症のご不安について、大切なポイントをまとめます。

今日のまとめ

  • 生後2ヶ月で「笑う」こと自体は、自閉症のサインではありません。むしろ「社会的微笑」なら順調な発達の証です。
  • この時期は「新生児微笑(反射)」と「社会的微笑(反応)」の移行期で、様子が不安定に見えることもあります。
  • 生後2ヶ月で「笑わない」ことも、多くは個人差の範囲内です。焦る必要はありません。
  • 発達の懸念は「笑顔」一点ではなく、「視線」や「声への反応」など、「社会的なやり取り」の全体像で見ることが大切です。
  • ご不安は、まず「3〜4ヶ月健診」で必ず専門家に相談してください。

生後2ヶ月は、診断を下す時期ではなく、赤ちゃんの様子を温かく「見守り」、積極的に「関わる」時期です。

「生後2ヶ月の笑う様子が、自閉症だったらどうしよう」と不安に思うその視線は、赤ちゃんのことを深く愛し、注意深く見守っている証拠です。その「観察力」は、これから先の子育てにおいて、とても大きな力になります。

そのエネルギーを、どうか診断への不安だけではなく、赤ちゃんと目を合わせ、優しく歌いかけ、たくさん抱きしめるといった、今しかできない豊かな「関わり」へと注いであげてください。その日々の積み重ねこそが、赤ちゃんの健やかな発達を支える一番の基盤になるかなと、私は思います。

この記事は、医学的な診断や助言に代わるものではありません。赤ちゃんの健康や発達に関してご懸念がある場合は、必ず小児科医や保健師などの専門家にご相談ください。

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ひとやすみ担当
「生きづらさの正体は何だろう?」—ADHDや自閉症スペクトラム(ASD)など、発達の特性と共に生きる中で抱く、その根源的な問いと長年向き合ってきた「ひかり先生」です。

本サイトは、立場を問わずすべての方に向けて、発達特性がもたらす困難を乗り越えるための「気づき」と「サポート」のヒント集を提供することをミッションとしています。

私たちは、特性による困難を、「不登校」という具体的な問題から、「社会的な適応困難」や「自己肯定感の低さ」といった、誰もが直面しうる普遍的なテーマとして深く捉えています。

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