自閉症

自閉症の子が絵本をめくるのはなぜ?感覚特性と発達を促す支援

yama333

こんにちは。発達グレーとライフデザイン手帖、運営者の「ひかり先生」です。

子どもに絵本を読んであげたいのに、物語には見向きもせず、ただひたすらにページをめくるだけだったり、時にはビリビリに破る行動をとったりして、戸惑うことはありませんか。ネットで自閉症や絵本、めくるといった言葉で検索しては、1歳半検診や2歳での様子と比べて不安になったり、おすすめの絵本を買っても繰り返し同じページばかりで全く読まない姿に落ち込んだりしている方も多いかもしれませんね。

でも、子どもが絵本に集中しないように見えたり、独特な遊び方をしたりする行動には、その子なりの感覚の受け取り方や、世界を理解しようとする大切なプロセスが隠されているんです。この記事では、そんな特異に見える行動の裏側にある心理を紐解きながら、家庭でできる具体的なサポートや絵本の楽しみ方を一緒にお伝えしていきたいなと思います。

  • 絵本を高速でめくり続ける行動の裏にある感覚的な理由
  • 本を破ってしまう原因別の具体的な対処法と環境づくり
  • 子どもの特性に合わせた読み聞かせのテクニック
  • 視覚や聴覚の特性に寄り添うおすすめの絵本選び

自閉症の子が絵本をめくる理由

自閉症の子が絵本をめくるのはなぜ?感覚特性と発達を促す支援

子どもが絵本をパタパタと高速でめくり続ける姿を見て、「どうして物語を聞いてくれないのかな?」と不思議に思うことはありませんか?ここでは、その行動の裏にある神経学的・心理学的な理由を探っていきますね。

1歳半検診で絵本をめくるだけ

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1歳半検診では、絵本を使った「指差し」や「言葉の理解」の確認が行われることが多いですよね。その際、子どもが絵本をめくるだけで内容に全く注目していないと、「発達に遅れがあるのでは?」と指摘されることがあり、ひどく落ち込んでしまう保護者の方は少なくありません。

独自の学習スタイルのサインかも

でも、専門的な視点から見ると、これは単なる「遅れ」というよりも、その子独自の学習スタイルや感覚の受け取り方の特徴を表していることが多いんです。定型発達の子どもが物語の全体像を楽しむのに対し、自閉症の特性を持つ子は、自分なりのペースで「世界のルール」を整理している真っ最中だったりします。だからこそ、検診での指摘を重く受け止めすぎず、「この子なりのペースで情報を処理しているんだな」と捉え直してみることが大切かなと思います。

絵本をめくるだけの時期の意味

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では、なぜ子どもは絵本をただめくり続けるのでしょうか。実は、この行動には大きく分けて「視覚的な自己刺激」と「運動機能の確認」という2つの意味が含まれていることが多いんです。

視覚的な心地よさを求めて

パラパラとページをめくる時、紙が動く残像や、光の反射、色が次々と切り替わる様子が生じますよね。これが、視覚が敏感な子にとってはとても心地よい刺激(ステミング)になっているんです。換気扇が回るのをじっと見つめたり、ミニカーのタイヤを回し続けたりするのと同じで、予測可能で規則的な視覚入力を脳が求めている状態だと言えます。

微細運動のトレーニングにもなっている

また、薄い紙を1枚ずつ正確にめくるという動作は、指先の力加減をコントロールする高度な運動です。子どもは無意識のうちに、自分の手指の感覚を確かめ、成功体験を繰り返すことで脳の報酬系を満たしているのかもしれません。

絵本を破る行動に隠された心理

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大切に選んだ絵本をビリビリに破られてしまうと、親としては悲しいやら腹立たしいやら、複雑な気持ちになりますよね。でも、子どもは決して「親を困らせよう」として破っているわけではないんです。

感覚追求と感情のサイン

絵本を破る行動には、いくつかの明確な理由があります。一つは「感覚追求」です。紙が裂ける時の「ビリビリ」という高い音や、指先に伝わる抵抗感が、子どもにとってはたまらなく魅力的な遊びになっているんです。また、まだ指先の力加減が未熟なために、めくろうとして意図せず破ってしまうこともあります。

さらに見逃せないのが、「ストレスや不快感の表現」です。言葉でうまく自分の気持ちを伝えられない時、退屈だったり、読み聞かせの内容が理解できなくて苦痛だったりする気持ちを、一番近くにある絵本を破ることで発散しているケースも少なくありません。

絵本を読まない時の感覚特性

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「何度読み聞かせようとしても、手で払いのけられてしまう」「物語を全く読まない」と悩むこともありますよね。これは、自閉症の子どもが持つ特有の認知スタイルが関係しています。

ローカルプロセシング(部分への過集中)

定型発達の子どもは、絵本のページ全体を見て「ウサギさんが泣いているね」と文脈を読み取ろうとします。しかし、自閉症の特性を持つ子は、全体よりも「部分」に注意が向きやすい(ローカルプロセシング)傾向があります。例えば、ページの隅に描かれた小さな点や、キャラクターの目の形など、ごく一部の情報に過集中してしまうんです。

そんな時に大人が横から物語を読み上げると、子どもにとっては「自分が心地よく集中している視覚情報を邪魔するノイズ」に感じられてしまい、結果として本を閉じたり、逃げ出したりしてしまうんですね。(出典:厚生労働省 e-ヘルスネット『自閉スペクトラム症(ASD)』)

絵本に集中しないADHDとの違い

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絵本に集中できず、次々とページをめくってしまう行動は、ADHD(注意欠如・多動症)の特性を持つお子さんにもよく見られます。しかし、見た目は似ていても、その背景にある心理は少し異なります。

過集中か、注意散漫か

自閉症の子の場合、めくる動作そのものの「感覚」や特定の視覚刺激に「固執・過集中」しているため、他の情報が耳に入らなくなっています。一方でADHDの子の場合は、一つの場面に留まることができず、次から次へと新しい刺激を求めて「注意が散漫」になっている状態です。

そのため、自閉症の子には「感覚を十分に満たしてあげること」、ADHDの子には「短い時間で完結する達成感を与えること」など、特性に合わせたアプローチの微調整が必要になってきます。

自閉症の絵本めくる行動への支援

自閉症の子が絵本をめくるのはなぜ?感覚特性と発達を促す支援

子どもが絵本をめくる理由や背景がわかってくると、少し見方が変わってきませんか?ここからは、その特性をポジティブに捉え、家庭で実践できる具体的なサポート方法や環境づくりのコツを詳しくお伝えしていきますね。

繰り返しめくる行動への対応

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ある日突然、今まで見向きもしなかった絵本を「読んで、読んで」と執拗に持ってくるようになることがあります。同じページを何度も繰り返しめくる行動に、「またこれ?」と少し疲れてしまうこともあるかもしれません。

脳の発達ブーム(理解の旬)の到来

実はこれ、脳科学的に見ると「理解の旬(ブーム)」が到来している素晴らしいサインなんです。自閉症の子にとって、未知の情報は不安の種ですが、一度パターンを理解した情報は絶対的な安心感をもたらします。何度も同じ本を読みたがるのは、脳がその情報を完全に「自分のもの」にするために、高頻度の入力を求めている状態なんですね。

このリピート要求を拒絶せず、できる限り付き合ってあげることで、子どもの言語理解能力は飛躍的に伸びていきます。言葉を一言一句丸暗記して、後で別の場面でそのフレーズを使えるようになる子も多いんですよ。

2歳で絵本をめくるだけの時

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2歳を過ぎても、相変わらず絵本を高速でめくるだけだと、「そろそろ物語を理解してほしいな」と焦る気持ちが出てくるかもしれません。でも、この時期に無理やり物語を教え込もうとするのは、絵本を「嫌なもの」にしてしまうリスクがあります。

子どものペースに同調する(ジョイニング)

まずは、子どもがめくっているペースに合わせて、大人が寄り添うことから始めてみましょう。子どもがページをめくるタイミングで「シュッ、シュッ」「パラパラ〜」と軽快なオノマトペ(擬音語)を声に出してあげます。

ジョイニングの効果

大人が自分の行動に同調してくれていると感じると、子どもは安心し、「この人と一緒にいると楽しいな」と感じるようになります。これが、将来のコミュニケーションの土台となる「共同注意(同じものを一緒に見る力)」を育む第一歩になります。

破る行動を防ぐ環境づくりのコツ

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絵本を破ってしまう行動には、「ダメでしょ!」と叱るよりも、物理的な環境調整と代替品の提供が何より効果的です。叱責は子どものストレスを高め、かえって別の問題行動を引き起こすこともあるので注意が必要ですね。

100円ショップを活用した「プレ・ハブ」戦略

破壊を未然に防ぐためには、以下のような工夫がおすすめです。

破る理由 心理・感覚的背景 具体的な対策
感覚追求 裂ける音や振動への快感 「破っていい箱」の設置、梱包用プチプチや新聞紙の提供
運動制御の未熟さ 指先の力加減が難しい 分厚いボードブックの使用、100均の補修テープで角を先行補強
ストレス・拒絶 理解不能な内容へのイライラ 絵本の難易度を下げる、文字を読まずに絵だけを実況中継する

特に、100円ショップの透明補修テープは優秀です。新品の絵本を買ったら、あらかじめ破れやすいページの端や綴じ目に貼っておくことで、耐久性が飛躍的にアップします。また、ダイソーなどの「ものしりカード」をセリアのカードホルダーに入れて、手作りの「絶対に破れない図鑑」を作るのも、多くの保護者の方が実践している素晴らしいアイデアですね。

視覚支援を取り入れた読み聞かせ

自閉症の子が絵本をめくるのはなぜ?感覚特性と発達を促す支援

自閉症の子への読み聞かせで一番の壁になるのは、「話し言葉が速すぎる、または抽象的すぎる」ことです。長い文章をそのまま読んでも、彼らの脳にとっては処理しきれない外国語のように聞こえていることがあります。

実況中継と5秒待つルール

そこで、文章をそのまま読むのではなく、視覚情報と言語情報をリアルタイムで一致させる工夫を取り入れてみましょう。

  • 実況中継(ナレーション):「車、走ってるね」「赤いね」と、子どもが見ている絵を短い言葉で伝えます。
  • 代弁(セルフトーク):子どもがめくりたそうにしていたら「めくる?」「次は何かな?」と、子どもの気持ちを言葉にしてあげます。
  • 5秒待機:「これなあに?」と問いかけた後、心の中で5秒数えて待ちます。情報処理に時間がかかる子にとって、この「間」が自発的な反応を引き出す鍵になります。

身体的な落ち着きをサポートする

多動傾向が強い子の場合は、お布団の中で腕枕をするように子どもを優しくホールドしながら読み聞かせる(腕枕監禁などと呼ばれることもあります)と、身体感覚が落ち着き、視覚情報に集中しやすくなることがあります。もちろん、子どもが嫌がる場合は無理に固定しないでくださいね。

自閉症の子におすすめの絵本

自閉症の子が絵本をめくるのはなぜ?感覚特性と発達を促す支援

絵本選びは、「子どもの現在の状態」と「どんな感覚を楽しんでいるか」に合わせて戦略的に選ぶとうまくいきやすいです。ここでは、特性に寄り添いやすいおすすめの絵本をいくつかご紹介しますね。

視覚刺激と音の響きを楽しむ

『もこ もこもこ』(谷川俊太郎 / 元永定正)
抽象的な形が膨らんだり弾けたりする様子が、視覚的な快感を与えてくれます。物語が理解できなくても、色の変化や幾何学的な動きだけで十分に楽しめる一冊です。

『じゃあじゃあびりびり』(まついのりこ)
「水がじゃあじゃあ」「紙がびりびり」といった、日常の音をオノマトペで表現しています。自閉症の子は文法的な言葉よりも、音の響き(オノマトペ)に強く惹かれる傾向があるため、発語の引き出しとして非常に優秀です。ボードブックなので破れにくいのも嬉しいポイントですね。

『きんぎょが にげた』(五味太郎)
視覚探索の基礎を養うのにぴったりです。「きんぎょ、どこかな?」と一緒に探すことで、共同注意のトレーニングにもなりますし、見つけた時の達成感が学習へのモチベーションを高めてくれます。

自閉症と絵本めくる行動のまとめ

自閉症の子が絵本をめくるのはなぜ?感覚特性と発達を促す支援

ここまで、自閉症の子が絵本をめくる理由や、破る行動への対策、読み聞かせの工夫についてお話ししてきました。「自閉症絵本めくる」というキーワードで検索してこの記事にたどり着いた方は、きっと毎日子どもと真剣に向き合い、悩みながらも最善を尽くそうとしている愛情深い保護者の方だと思います。

絵本をパラパラとめくり続ける行動は、決して発達の停滞ではありません。子どもが視覚情報の波を自分なりにコントロールし、紙の手触りを通じて世界を確認している、とても大切な時間です。読み聞かせは、親が何かを「教え込む」時間ではなく、子どもが今何に興味を持ち、何を美しいと感じているのかを「教わる」時間だと捉え直してみてくださいね。

ページをめくるのが早すぎても、途中でどこかへ行ってしまっても、それは失敗ではありません。「今日はこの色で手が止まったな」「この音で少し笑ったな」という小さな変化を見つけて、一緒に喜びを共有していくこと。その積み重ねが、いつか必ず、子どもと外界を繋ぐ豊かなコミュニケーションの架け橋になってくれると、私は信じています。焦らず、比べず、お子さんなりの絵本との出会いを、ゆっくりと楽しんでいってくださいね。

ABOUT ME
ひかり先生
ひかり先生
ひとやすみ担当
「生きづらさの正体は何だろう?」—ADHDや自閉症スペクトラム(ASD)など、発達の特性と共に生きる中で抱く、その根源的な問いと長年向き合ってきた「ひかり先生」です。

本サイトは、立場を問わずすべての方に向けて、発達特性がもたらす困難を乗り越えるための「気づき」と「サポート」のヒント集を提供することをミッションとしています。

私たちは、特性による困難を、「不登校」という具体的な問題から、「社会的な適応困難」や「自己肯定感の低さ」といった、誰もが直面しうる普遍的なテーマとして深く捉えています。

当事者の方へ: 特性を理解し、自分らしい対処法を見つけるための深い洞察。

支援者の方へ: 立場や状況を問わず、特性に寄り添った適切な関わり方のヒント。

「発達グレーと不登校のサポート手帖」は、あなたにとって、完璧な解決法を求める場所ではなく、「同じように悩んでいるのは自分だけじゃない」と感じ、孤独感を和らげ、心にひとやすみできる場所となることを目指しています。
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